医学は社会の中に存在します。ジョン・スノウの疫学から始まった近代公衆衛生、ナイチンゲールの統計学、インフォームドコンセントの確立、医療資源配分を問うた「神の委員会」、病院制度の宗教的起源、禁酒法と医療、植民地と医学——医学と社会が交差する場面に焦点を当てます。技術や薬の話だけでは語れない、医療を取り巻く倫理・制度・文化の歴史を、現代の医療現場で働く立場から振り返ります。
医学と社会の歴史 一人の女王から広がった「王家の病」——血友病がヨーロッパの王室と歴史を揺るがした話
一人の女王から広がった「王家の病」——血友病がヨーロッパの王室と歴史を揺るがした話
19世紀のイギリス。大英帝国に君臨したヴィクトリア女王の体には、彼女自身も知らない「ある変異」が潜んでいた。
その変異は、女王が産んだ...
医学と社会の歴史 出島の「山オランダ人」——シーボルトが江戸日本に遺した西洋医学と、地図が招いた追放
出島の「山オランダ人」——シーボルトが江戸日本に遺した西洋医学と、地図が招いた追放
1823年、鎖国下の日本。長崎の出島に、一人の若い医師が上陸した。
名はフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(Philipp Fr...
医学と社会の歴史 千円札の細菌学者・野口英世——「美談」と「実像」のあいだ
千円札の細菌学者・野口英世——「美談」と「実像」のあいだ
2004年から2024年まで、日本の千円札には一人の細菌学者の顔が印刷されていた。野口英世(のぐち・ひでよ)。
貧しい農家に生まれ、幼くして左手に大やけどを負い...
医学と社会の歴史 女王が麻酔を嗅いだ日——「産みの苦しみ」と無痛分娩をめぐる150年の論争
女王が麻酔を嗅いだ日——「産みの苦しみ」と無痛分娩をめぐる150年の論争
1853年4月7日、ロンドンのバッキンガム宮殿。
イギリス女王ヴィクトリアは、8人目の子ども(後のレオポルド王子)を産もうとしていた。陣痛が強ま...
医学と社会の歴史 病院はどこから来たか——キリスト教が生んだ「弱者を看る場所」
病院はどこから来たか——キリスト教が生んだ「弱者を看る場所」
「病院」とは、当たり前のように存在する施設だ。具合が悪ければ行く場所、誰でも受け入れてくれる場所——私たちはそう考えている。
しかし、「支払い能力に関わらず...
医学と社会の歴史 「同意」という革命——インフォームドコンセントが医療を変えるまで
「同意」という革命——インフォームドコンセントが医療を変えるまで
1947年8月20日、ニュルンベルク。
連合軍の軍事法廷が下した判決文には、10項目の原則が記されていた。第一項はこう始まる——「実験対象となる人の自発...
医学と社会の歴史 禁酒法時代の工業用アルコール政策——アメリカが直面した公衆衛生上の悲劇
禁酒法時代のアメリカで、連邦政府は工業用アルコールにメタノールをはじめとする毒物を意図的に添加した。密造業者はそれを精製して販売し、市民が死んだ。政府は「自業自得」と言い続けた。1926年のクリスマスシーズン、ニューヨークだけで400人以上が死亡した。
医学と社会の歴史 「治す」から「生きる」へ——リハビリテーション医学はいつ生まれたか
「治す」だけでなく「生きる」まで扱うリハビリテーション医学はいつ生まれたのか。二度の世界大戦、ポリオの流行、そしてハワード・ラスクという医師の革新——その誕生の歴史を辿る。
医学と社会の歴史 エジソンは「問題児」だったのか——ADHDという視点で偉人を読み直す
エジソンは「問題児」だったのか——ADHDという視点で偉人を読み直す
インターネット上に広く流通している話がある。
エジソンが学校から「あなたの息子は精神薄弱です」と書かれた手紙を持ち帰ったとき、母親がその内容を隠し、...
医学と社会の歴史 「ランプの貴婦人」ではなく統計学者だった——ナイチンゲールがグラフで官僚を動かした日
「ランプの貴婦人」ではなく統計学者だった——ナイチンゲールがグラフで官僚を動かした日
「ランプを持った天使」——フローレンス・ナイチンゲールに対するこのイメージは、世界中に広まっている。夜の病棟を歩き回り、傷ついた兵士たちの...