Dr.げち

薬・感染症の歴史

奇跡の薬が「沈黙の春」を招いた——DDTとマラリア撲滅計画の光と影

1948年、ストックホルムのノーベル賞授賞式。スイスの化学者パウル・ヘルマン・ミュラー(Paul Hermann Müller)は、生理学・医学賞の壇上に立った。彼が発見したのは殺虫剤だった。化学者がマラリアでノーベル医学賞を受賞するという...
薬・感染症の歴史

ゼンメルワイスと手洗い革命——産褥熱の謎を解いた医師の発見と苦闘

1840年代のウィーン総合病院(Allgemeines Krankenhaus)。 ここには二つの産科病棟があった。第一病棟は医学生と医師が担当し、第二病棟は助産師が担当していた。産婦たちは入院時にどちらの病棟に割り振られるかを知ることがで...
薬・感染症の歴史

冷蔵庫がポリオを倒した——コールドチェーンと感染症撲滅の隠れた立役者

1955年、ジョナス・ソークのポリオワクチンが承認された。世界中が歓喜した。小児麻痺(ポリオ)は毎年数万人の子供たちを麻痺させていた恐怖の感染症だ。しかし世界中の子供たちに接種するためには、もう一つの問題があった。ワクチンは熱に弱く、常温...
外科・手術の歴史

麻酔は宴会の余興から生まれた——笑気ガスと近代麻酔誕生の奇妙な歴史

麻酔なしで手術を受けることを想像してほしい。皮膚を切られ、骨を鋸で引かれ、内臓に触れられる——その全てを完全に意識がある状態で。19世紀中ごろまで、手術とはそういうものだった。速い外科医が「名外科医」とされたのは、スピードこそが患者の苦痛...
薬・感染症の歴史

染料工場が感染症を倒した——アニリン染料からサルファ剤への100年の連鎖

1932年、ドイツのバイエル社の研究室で、ある研究者が赤い染料をマウスに注射した。マウスは連鎖球菌の致死量で感染させられており、本来なら数日で死ぬはずだった。しかし赤い染料を投与されたマウスたちは——生き残った。 これは偶然ではなか...
医療器具・技術の歴史

戦場が輸血医学を作った——第一次世界大戦と血液銀行の誕生

1914年、ヨーロッパで戦争が始まった。 機関銃・砲撃・毒ガスが支配する塹壕戦は、それまでの戦争とは桁違いの大量出血傷者を生み出した。四肢を吹き飛ばされ、腹部を貫通された兵士たちは、傷口を縫合できても出血性ショックで次々と死んでいっ...
薬・感染症の歴史

結核患者の日光浴が光線療法を生んだ——サナトリウムと紫外線医療の意外な連鎖

19世紀のヨーロッパで、結核は「白死(White Death)」と呼ばれた。 ゆっくりと体を蝕み、頬を紅潮させ、詩的な美しさすら帯びながら人を死に至らせた。その結核に対抗するため、医師たちは患者を山岳地帯や海岸に建てた療養施設——サ...
外科・手術の歴史

コカインが歯科を救った——コカの葉と局所麻酔誕生の意外な歴史

「コカイン」と聞けば、現代人は麻薬を連想する。 しかし1884年まで、コカインは「奇跡の薬」として医師たちが競い合って研究した物質だった。そしてその年に起きた一つの「偶然の発見」が、歯科・眼科・外科における局所麻酔という全く新しい分...
医学と社会の歴史

グーテンベルクが人体を「正確に」した——活版印刷と近代解剖学誕生の深い関係

「印刷機と医学に何の関係があるのか」——と思うかもしれない。 しかし1543年、アンドレアス・ヴェサリウスが出版した『人体の構造について(De Humani Corporis Fabrica)』は、活版印刷なしには存在しえなかった。...
栄養と疾病の歴史

トウモロコシが精神病院を埋めた——ペラグラとゴールドバーガーの食事革命

1900年代初頭のアメリカ南部。精神病院は「謎の狂気」に侵された患者で溢れていた。 皮膚が赤く腫れ上がり、激しい下痢が続き、やがて精神が崩壊する。何万人もの患者が「感染する精神病」として隔離され、施設の中で死んでいった。しかし彼らを...
タイトルとURLをコピーしました